末期の患者さんにできることは?

質問:医療に携わる立場として、死を迎えようとしている患者さんにできることは何でしょうか?

バリー・カーズィン:
まず、「死ぬということは自然なことだ」と知ることです。重篤な患者さんであれば、ときには「死を迎える」とううことが自然なことであることもあります。まず、それを認識することが重要です。

それからもうひとつ、残念ですが、ここに居る私たちの誰も、神ではないんです。つまり、時がきたら誰かが死を迎えるということを止めることはできない…ということです。それが、自然の法則の一部であるということを認識する。

それから3番目としては、「私はあなたのことを助けることはできません」と、私は言うことはありません。私は常に、「私はあなたに何かすることはできます」と言います。

いわゆる、ターミナル・末期の場合もありますが、実は、末期の患者の方々こそ、私たち医療従事者をとても必要としているのです。

例えば、私たちは、もう何もできないと思ったときに、その状況から離れてしまいがちです。そして、患者さんや家族からも離れてしまいます。すると、医療従事者の方から、「じゃあそういうときはどうしたら良いんですか?」という質問を受けることがあります。

そういった質問に私が答えるのは、「ただ、居ればいいんです。」ということです。
「5分でいいから、その患者さんのベッドサイドに居てあげて下さい。」と言います。

そうすると、「居たら何か言わないといけないけど、何を言えばいいんですか?」というふうに聞かれます。
私からは「何も言わなくていいんです」と答えます。

そこで、ただ一緒に座っているだけでいいんです。ただ、何も価値判断を持たないで居るだけです。
「少なくとも携帯電話はサイレントにして居ましょう」と言います。
そして「電話やコンピューターを見ずに、ただそこに居続けて下さい。」と言います。

患者さんやご家族が何か話したくなったら、きっと話しかけてくると思います。もしかしたら、患者さんもご家族も「ありがとう」とは感謝を言わないかもしれませんが、彼らにとっては、それ以上に意味の大きなことなのです。

それが、良い医師であることのひとつの条件でもあります。それから、良い看護師であることにも含まれることです。それから、レントゲン技師の方にも、それが良いレントゲン技師であることに含まれます。

それがもちろん、患者さんやご家族にとって、気持ちの助けになるかもしれません。

それ以上に、私たち医療従事者自身の気持ちが助かるということでもあります。
つまり、挫折感・失敗したという感じがしないということです。

そして、死を迎えるまで、患者さんやご家族と一緒に居たと思うようになります。
私は、そのことをとても信じています。素晴らしい質問をありがとうございました。

‐ 2016年開催・医療従事者向けプログラムより