アメリカのメイヨークリニックの医師たちは、今月アメリカで講演予定だったダライ・ラマ法王に休息を取るよう診断しました。この仏教のリーダーと、法王に仕えるひとりの医師との間では、お互いにアドバイスをしあいます。
ダライ・ラマ法王は、カリフォルニア出身の医師に、地球の反対側で、現在の医療体制のなかで慈悲を広げるようインスピレーションを与えました。
このPBSのニュースアワードキュメンタリーは、PBSの継続シリーズAgents for Change(変化の行為者)のひとつです。
http://www.pbs.org/newshour/bb/dalai-lamas-american-doctor-wants-compassion-medicine/
Dr.カーズィンは、その医師としてのキャリアを、シアトルのワシントン大学の准教授として始めました。それがまさか、のちに地球の裏側でチベット人たちのために在宅医療をするようになるとは彼は夢にも思っていませんでした。
「私はよく自分の頰をつねっています。今のようなことが起こるとは想像もつきませんでした。」
1988年に初めてダラムサラを訪れたのは、ダライ・ラマ法王の命で、伝統的なチベット医学の医師たちに、現代的な医療の研究方法を教え、異なる医療体系を相互に助け合わせ、病気の人にはいつでもその両方を使えるようにするためです。
最初は6ヶ月だけだった滞在予定を、延長し続けて、今では27年になります。
18歳のとき、Dr.カーズィンは命を脅かす脳膿瘍を患いました。その体験から、彼は医師になる決意をしました。そして20代、30代はじめには立て続けに、母親と妻の両方を亡くしました。その体験から、仏教僧侶になる決意をしました。
Dr.カーズィンは熱心に、瞑想の実践を行いました。ダライ・ラマ法王は、つねに社会とつながり積極的に活動し、医師としての業績を保ち続け、医療を継続するように励ましました。
愛と慈悲、そして智慧を同等に実践するようにというのが、つねに変わらないダライ・ラマ法王からのアドバイスでした。
Dr.カーズィンは、仏教を学び続けた結果、正式に出家し仏教僧侶になりました。そして瞑想は、内なる平和と幸せへの道とつながりました。
Dr.カーズィンは、以前はよく怒っていたが、今は怒ることが珍しくなったといいます。さらに自分勝手さも以前より減り、慈悲心が大きくなったと言います。
また、競争心も強かったが、それも減り、あるとしても他者にではなく、自分自身に向けられるようになったと言います。人生は、瞑想と破壊的感情が減ることで、さらにより良くなりました。Dr.カーズィンは、怒りや破壊的感情を減らす方法(感情の衛生法)を、世界中の医師に届けていっています。
ダライ・ラマ法王は、Dr.カーズィンを自分のメッセンジャーだと呼び、日本、モンゴルや、アメリカなどに送り続けています。
5−6年前だったら、アメリカ医療界を自ら去ってまったく異なる世界に入って行った人が、全米の一流大学のメディカルスクールで権威ある講義を行なうことなどはまったく不可能なことでした。
いまでは、Dr.カーズィンはスタンフォード大学メディカルスクールなどで慈悲にかんする講義を行なっています。彼個人は、家も、車も、冷蔵庫さえも持っていないのです。
Dr.カーズィンの同僚医師たちは、最初の頃は、彼がとんでもないところに行ってしまったと言い、早く戻ってきて医療の仕事につき居心地の良い高い経済的レベルの生活、また学術的な研究者として医療にかかわる生活を送るようアドバイスしました。
しかし今年、スタンフォード大学での特別講義を行なったその日には、同僚たちは講義に熱心に耳を傾けただけでなく、一緒に瞑想まで実践しました。
Dr.カーズィンは、瞑想は、今(現在)に集中することを助けると言います。過去もあらゆる後悔もなく、将来の計画や心配もない状態です。
数十年もの瞑想実践の結果、Dr.カーズィンに成果があらわれました。その成果が、科学的に計測されました。
Dr.カーズィンが持っている写真のひとつは、ウィスコンシン大学マディソン校で彼の脳を研究対象として行なわれた、瞑想が及ぼす脳への影響に関する研究実験です。
司令機能をもつセンターである前頭葉前部皮質 で見出されたポジティブな結果があらわれています。この脳の部位は、計画、論理付け、想像、共感を改善するものです。Dr.カーズィンの脳では、瞑想によってこれらがすべて高められると証明されました。
スタンフォード大学にDr.カーズィンを招聘した医師であるエイブラハム・ベレゲース教授は、アメリカの医師たちには、不満足の伝染病があると言っています。そのため、Dr.カーズィンのメッセージがより受け入れられやすいのです。
ベレゲース教授は、ある研究を引用し、「アメリカの50%の医師は、不幸せだ。これは、個人的な問題ではなく、体制的な問題です。テクノロジーを重視するがために、医師たちは、もともと彼らを医療に引きつけた慈悲にさく時間がなくなっているのです。」と言います。ベレゲース教授は、続けて、研究の引用し「救急医療の医師たちは、コンピューターで、1日4000回のクリックをします。それは、患者との時間を奪っているのです。」と言っています。
Dr.カーズィンは、解剖学と生理学と同じように。慈悲を医学にもなくてはならないものにしたいと言っています。
さらに、彼は、以前は2つの帽子、つまり医師の帽子、僧侶の帽子をかぶっていると言っていました。しかし、今ではそのように言いません。今は、ひとつの、医療科学者—僧侶の帽子だけなのです。